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2019年5月 9日 (木)

北条裕子「美しい顔」

本屋で、ふと目に入ったハードカバーの本。
装丁のデザインが好きだったのもあり、「群像新人文学賞受賞」という文言も気になった。群像は購読してないけど、群像関連の作品とは相性がいいと勝手に思ってる私。
全然知らない作家さんですが、新しいお気に入りの作家さんも増やしたかったし、衝動買いで買ってしまった。
北条裕子「美しい顔」
重い。
東日本大震災の被災者の高校生の女の子の話。被災から、避難所で暮らしている主人公の心のうちが、ひたすら書かれ続ける。
大きな物語は特になく、主人公の内省描写がメイン。
とにかく、話が重い。
歳を重ねるごとに重い話から避けがちになってきたのに、重いものを選んでしまった。
「装丁」と「群像」だけで買ってしまった。
こんな重い作品を買ってしまった。
しかもハードカバー…
一時後悔したが、自然と読み進められた。
文章のリズムがいい。
なので、文章がとことこ進みながら、重いものをこれでもかってばかり、心に投げつけてくる。
文章のリズムって人それぞれ好みが分かれるかもしれないけど、声に出したら少し演劇チックな文章かもしれない。
昔は、現実をつきつけるような作品が好きだったけど、いつのまにか、その心の体力がなくなり、突きつけられないような、気楽にみれる作品ばかりを見るようになっていた。
突きつけられても虚像を見せられるくらい。
そして、もう震災自体、過去になってきつつあった自分に、現実を突きつけてきた。
当時ですら、想像はできたはずなのに、してこなかった風景を見せつけてくる。実際の被災地の様子。避難所の様子。テレビが写すものとそうでないものを含め…
それがまた、たんたんとリズム良い文章だから先に進めてしまう。
止めたくてもすすめてしまう
声に出してよみ、朗読劇でもやりたくなるような軽快な文章。
しかし、中身は限りなく重い。
今の心境であれば、こんな重い話は読まないはずなのだけど、この文章だからこそ、読み進めてしまう、この不思議な力。
震災を忘れたかけていた自分にとっては、重い作品を読むのが辛い今、こういうのを読めることを感謝したくなる作品。今、読むのが大切な作品。
実際に体験したような文章でした。
取材はしたけど、実際体験はしてないんだろうなぁと思うけど、それで、あの文章を書けるその想像力と、それに向き合うその勇気がすごい。
(やはり、参考文献を元にして、実際足は運んでないことがあとがきにあった。さらにすごい)
避難所でのマスコミ報道の描写も、
テレビの見せ方、マスコミのフィルタ。分かってるはずのものが。改めて見せつけられ、その画面の向こうにいただろう自分を見せつけられる。
(まぁ、感動的なドキュメンタリーとかは見ないんですが、被災地の映像を求めていた自分が思い出された)
でも、そこはこの話の、メインではない気がした。
自分の弱さと過ごすこと。ごまかすこと。
弱さを認めて、静かに向き合うこと、それと戦うこと。そうじゃないと、前には進めないこと。
最近、目をそらしていたようなものに向き合わせてくれた。
なので、後半は涙がとまらなくかった。
朝の通勤電車で、泣きながら、読み進めた。
涙がでても。読むのやめることができなかった。読み進めたかった。
前向きに戦い続ける、進むその一歩、最後の一文を、読む終わって、一瞬完全に呆けてしまいました。
 
ずっしりと心にくる、久々に読んだ感を、味あわせてくれた作品。間違いなく、稀にみる傑作です。
そんなこんなで、後悔は忘れて、買ってよかったと思う読み終わった今。
多くに人によんでほしいと思ってしまうほどのまぎれもない傑作。
重い話だけど、読んでる時、全身の、心の疲れがどかってくる作品だけど
ちゃんと前向きになれる作品です。
他の作品が出てるか分からないけど、今後、楽しみな作家さんに出会えて良かった!
偶然選んだ自分の衝動買いに、自分の浪費癖に感謝!
(笑)

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